【旅する鳥雑学】8,000mのヒマラヤ山脈を越えていくツル




皆さんはアネハヅルと言う鳥をごぞんじですか?

ツルの一種で、漢字で書くと姉羽鶴、全長約90cmと世界の中でも最も小さいツルです。

今回はこのツルたちが、渡りの途中であのヒマラヤ山脈を越えて行く話を紹介します。

ダウラギリの上昇気流をつかまえろ!

もともと渡り鳥であるアネハヅルは、季節によって最適な生息地を求めて移動します。

春から夏にかけてモンゴル高原で繁殖と子育てを行った彼らは、冬が近づくと食料を求めて暖かいインドへと旅立ちます。

4~10羽、時には400羽以上の群れを作って飛び立ち、ヒマラヤ山脈の中にそびえるダウラギリ(8,167m世界7位の高峰)のあたりで、山を越える上昇気流を待ちます。

世界でも最小のツルと言われるアネハヅルの翼の力だけでは、ヒマラヤ山脈を越えられるわけはありません。

強い乱気流が渦巻き、風の方向が瞬時に変わるダウラギリ周辺で、うまく上昇気流に乗れるかどうか、V字型に組んだ編隊をうまく維持できるかどうか。

これが山越え成功の運命を分けます。

鳥が羽ばたくとき、羽根の左右から後ろへ向かって空気の流れが発生します。

V字型の編隊を組むことで、後ろを飛ぶ鳥はその空気の流れに乗って飛び、力を節約できます。

先頭を飛ぶ鳥には負担がかかるので、体力を温存していた後方の仲間の鳥が、次々と交代で先頭をつとめ、群れ全体の山越えを乗り切るのです。

アネハヅルの成鳥です。

目の後ろの白い飾り羽がオシャレ。

何故ヒマラヤ越えなどという無茶をするのか?

アネハヅルが何故ヒマラヤ越えなどという無茶をするのかは、実はよくわかっていません。

毎年数万羽の規模でヒマラヤ越えをしますが、アネハヅル全部が同じルートの渡りをする訳でもないのです。

もっと楽なルートをたどる群れもいます。ただ1説には太古からの本能が残っているためではないかとされています。

ヒマラヤ山脈の原形ができあがったのが、2,000万年ほど前と言われていますが、その当時は今ほどの高さも無く、アネハヅルの祖先たちは、さほど苦労もせず渡りをしていました。

ところが70万年ほど前、徐々に隆起していた山脈は、現在見られる数千メートル級の高さにまで達してしまいました。

それでも彼らは祖先から受け継いだ本能のままに、同じルートで渡りを繰り返しているのだそうです。

渡りの前でしょうか?モンゴル高原でのアネハヅルの親子です。

秋、モンスーン明けの好天の日、その頃にヒマラヤトレッキングに出掛けていたら空を見上げて下さい。

はるか上空を飛んで行くアネハヅルの、けなげな姿が見えるかもしれません。